PBFDという、インコにとっては悪魔の病とも言われる病気を知っていますか。
今回はヨウムの斗威(トウイ)くんが家族の愛情をいっぱいに受けてPBFDと戦い抜いた命の記録を、ご家族がお寄せくださった手記からご紹介します。
PBFDとは
PBFDとはサーコウィルスというウィルスの感染が原因で発病する難病です。
人間に例えると、エイズのような病気です。
PBFDそのもので命を落とすのではなく、PBFDによって免疫が低下することでかかる二次的な病気(健康なら重症化しないようなありふれた病気)で命を落とします。
治療方法が確立されていない、対症療法しかない不治の病です。
セキセイインコやヨウム、白色オウムに好発することが報告されています。
症状として、羽毛の急激な脱羽、曲がったり発育していない異常な羽根が生えてくるなどで、羽量が減っていく(ボリュームがなくやせてみえる)ことで気づくことが多いです。
トウイとの出会い
ヨウムのトウイとの出会いは、大型ショッピングモールに併設されているペットショップでした。
ヨウムという鳥の存在は以前から知っており、頭が良くてよくしゃべる鳥という印象で、実際にヨウムをみたのは初めてでした。
子供たちも小学校中~高学年となり、そろそろ犬や猫を飼いたいね、と家族で話す機会が丁度増えた矢先の出会いでしたので、「ヨウムを迎えたい」と子供たちから声がでたのも自然な流れでした。
初めての大きな鳥で(セキセイインコは飼ったことがありました)、飼育のハードルも高い鳥でしたから、家族でお迎えするために何度も話し合いました。
話し合いを重ね、ネットや本で勉強してヨウムを迎えることにしました。
その間売れてしまうのではないかと気が気ではありませんでしたが(1羽売れていました)ペットショップで4羽のヨウムの雛の中の1羽をお迎えしました。
名前は斗威(トウイ)。
息子たちの名前から一文字ずつ取って名づけました。
生活の中で感じる違和感
トウイとの生活はすべて新鮮でした。
鳥の賢さや利発さに毎日驚きながら、トウイがすくすく育っていくのを家族で楽しみにしていました。
息子たちにとっても弟ができたようなものでしたから、兄弟で仲良く世話をしている姿に「思い切って迎えて良かった」と思ったものです。
トウイが家に来て半年過ぎたあたりから「違和感」がありました。
羽根がずっとボサボサであること、視線が定まらずどこかうつろであることが気になったのです。
初めての大型インコの飼育でしたが、素人目からみても「羽根のパサつき具合」「表情の乏しさ」が気になっていきました。
PBFD陽性、そして治療
(なでなでされているトウイ。どこか視点が定まりません)
健康診断もかねて、トウイを鳥もきちんと診ていただける動物病院へ連れて行きました。
先生はトウイをみて一言「羽根が少ないですね」とおっしゃいました。
「この鳥はね、地肌がみえないくらい白い羽毛が生えているんですよ」トウイの頭の羽をかき分けながらみせてくれました。
トウイは白い羽毛がほとんどなく、灰色の羽毛の隙間から地肌がはっきり見えていました。
検査の結果、PBFD陽性でした。
体重も320gとヨウムの中ではやせているとのことでした。
治療法はなく、食事やサプリメント、栄養剤、水などを投薬しながら気をつけていく対症療法しかありませんでした。
「発症しているので長くはないかもしれません」
50年は生きるといわれ、息子は結婚したら連れて行くとまでいってくれたのに、トウイとの生活は長くはない。
あまりの急な宣告にただただ呆然とするしかありませんでした。
ごめんねトウイ
トウイは病院に行ってから眠る時間が明らかに増えました。
きっとトウイにとっては病院にいくことも大きな体力の消耗とストレスだったのでしょう。
日光浴を欠かさず行い、自然の風と空気に触れさせ、食事に気を使う日々でした。
数グラムの体重の増減に家族は一喜一憂しました。
トウイは少しずつ体力を失い弱っていきました。
最後は止まり木につかまることもおぼつかなくなり、目もうつろでした。
撫でても反応が薄く、意識も途切れ途切れのような感じもみてとれました。
お別れ
ある日の朝、トウイは静かにケージの隅で亡くなっていました。
我が家にきて1年3ヶ月過ぎていました。
50年は生きるはずだったトウイが2歳足らずでなぜ亡くならないといけなかったのか。
PBFDが憎くてたまりませんでした。
願わくば、トウイと一緒にいた4羽のヨウムたちがPBFDに感染していないことを願うばかりです。
トウイへ
トウイ、そちらの生活はどうですか。
思い切り羽ばたけていますか、大好きなバナナをたくさん食べていますか。
トウイとすごした数ヶ月は家族にとって本当に幸せでした。
賢くてやさしくてかわいいかわいい我が家の末っ子トウイ。
息子たちは君の足環のネックレスをいつも身につけていますよ。
出かけるときも必ず「トウイも連れて行かなきゃ」ってもって行きます。
ネックレスを手に持ちながら話しかけている息子たちの心にトウイはずっと生き続けてくれています。
トウイ、助けてあげられなくてごめんね。
また生まれ変わったらうちにおいでね。絶対に見つけてまた迎えに行くからね。
トウイありがとう。
いつまでもいつまでも一緒だよ。
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