美由紀さん(仮名)一家が出会った一羽のセキセイインコ、ピピちゃん。
家族で話し合って迎えたセキセイインコは生まれつき目が見えませんでした。
今回は目の見えないセキセイインコ・ピピちゃんと家族のお話です。
ピピちゃんとの出会い(美由紀さん視点)
「インコを飼おうか」夫は突然提案しました。
今住んでいる家は犬や猫は飼育できませんでしたが、インコやハムスターといった小動物はOKの賃貸マンションでした。
一人娘も小学3年生になり、妹や弟のようになれば良いなという気持ちでインコを迎えることにしました。
娘は大喜び。自分のお小遣いで飼育本を買っているほどでした。
そしてペットショップで「ピピ」と出会ったのです。
まだ羽根の生え揃ってない小さな小さな雛。
淡く優しい黄色いセキセイインコ。一目見て「この子がピピだ」と娘は決めていました。
始めてインコを飼うということもあり、ある程度羽根が生え揃って大きくなるまでショップで預かってもらいました。
ピピは家に来た日から甘えん坊で人懐っこく、娘の肩に乗るのが大好きな子でした。
学校から帰ってきてすぐにピピのケージに行く毎日。
娘とピピは本当に姉妹のようでした。
娘が照らしたライトにまったく反応しないのに違和感を感じて
ピピは宿題をしている娘のそばでくつろぐのが大好きでした。
そんなある日、娘の机のライトがピピのすぐ近くにあったにも関わらず、まったくまぶしいそぶりをみせていないのに気づきました。
ライトとピピの距離は10センチありません。
普通はまぶしくて移動するのでは…嫌な胸騒ぎがしました。
そこで、ピピの目の前で指をゆっくり左右に動かしてみました。
まったく反応がありません。
「まさかピピは目が見えてない…?」
病院に連れて行って診察した結果、視力がかなり弱いか、失明しているだろうとのことでした。
ピピには大好きな娘や私たちが見えていなかった。
私たちは大きなショックを受けました。
ピピちゃんと過ごした6年間
ピピがいつ失明したのか、生まれつき失明していたのかはわかりませんでした。
しかし、日常生活においては目がみえていないのが信じられないほどよく動き回っていました。
でも目がみえていないのは確かですから、ピピが怪我をしないようにケージを一回り大きいものに変え、止まり木の位置を低くしました。
ある知人が言いました。
「失明しているインコは返品して健康なインコと交換したほうがいいんじゃない?」
とんでもないことでした。
失明していようが、飛べなくなってしまおうがピピはピピ。
ピピの代わりはどこにもいません。
目がみえなくても家族の声や雰囲気を察知して甘えてくるピピ。
可愛くて可愛くてしょうがありませんでした。
羽根の生え変わり中に風邪を引いてしまい、命が危ないときもありました。
それも乗り越えてくれたピピとの日々は6年を過ぎていました。
突然のピピとの別れ
ピピとの別れは突然でした。
朝いつものように娘がピピの世話をしようとすると、娘が悲鳴をあげました。
「ピピが倒れてる!」
すぐにかけよるとピピがケージの中で倒れていました。
もうすでに亡くなっていました。
前日も元気でごはんもたくさん食べて普段と変わりないピピでした。
死因はわかりません。
獣医は「心臓発作かもしれません、解剖したら正確な死因がわかりますが…」と仰ってくださいましたが、家族の誰もが解剖に反対でした。
その夜は家族でたくさん泣きました。
たった一羽のセキセイインコがいなくなるだけで、こんなに家の中が暗くなるなんて。
それほどまでにピピの存在は大きくなっていました。
ピピがのこしてくれたもの
ピピともっともっと一緒にいたかった。
本当は痛かったかもしれない、苦しかったのかもしれない。
気づいてあげられなくてごめんね、ピピ。
思い出をたくさんたくさん残してくれたね。
できることなら、家族の顔、きれいな空、優しい海をピピにみせたかった。
ピピ、うちにきてくれてありがとう。
いつまでもピピは我が家の自慢の次女です。
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